会計システムの導入を検討しているけれど、費用がネックになっているとお考えの方も多いのではないでしょうか。
IT導入補助金をはじめ、会計システムの導入に活用できる補助金があることをご存知ですか。本記事では、中小企業や個人事業主の皆様が、補助金を活用して会計システムをお得に導入するための情報を徹底解説します。
最新の補助金情報から、対象となる会計システム、申請方法、選び方のポイントまで、会計システム導入に関する疑問を全て解決します。ぜひ、最後まで読んで、会計業務の効率化とコスト削減を実現してください。
関連記事:システム開発にかかる費用は?費用を抑えるコツについても解説
会計システム導入のメリット

会計システムを導入することで、経理業務の効率化、コスト削減、そして経営分析の精度向上といった、多岐にわたるメリットを享受できます。補助金を活用してこれらのメリットを最大化するための具体的な内容を見ていきましょう。
業務効率化
会計システムを導入する最大のメリットの一つは、日々の経理業務にかかる手間を大幅に削減できることです。手作業による仕訳入力や帳票作成は、時間と労力がかかるだけでなく、ヒューマンエラーのリスクも伴います。会計システムを導入することで、これらの作業を自動化・効率化することが可能です。
さらに、2023年10月から開始されたインボイス制度への対応も、会計システムを導入することで事務負担を軽減できます。適格請求書発行事業者登録番号の管理や、インボイス形式での請求書発行・受領、区分経理といった複雑な作業も、システム上で効率的に行うことが可能になります。
コスト削減
会計システムの導入には初期費用がかかりますが、長期的には大きなコスト削減効果が期待できます。請求書や領収書を電子化することで、印刷代や郵送費、保管スペースなどの経費を削減でき、ペーパーレス化が進みます。また、手入力や計算ミスが減ることで、修正に要する時間や追加コストを抑え、税務調査時のリスクも軽減されます。
さらに、日々の記帳作業を自社で行えるようになれば、税理士への依頼頻度が減り、報酬コストも低減可能です。経理業務が効率化されることで、担当者は経営分析など付加価値の高い業務に集中でき、企業全体の生産性向上にもつながります。
経営分析
会計システムは単なる記帳ツールではなく、経営状況を正確に把握し、迅速で的確な意思決定を支える重要な経営ツールです。リアルタイムで損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書を確認できるため、経営者は常に最新の財務状況を把握し、柔軟な判断を行えます。
また、売上や費用、利益率、顧客別・商品別など多角的なデータ分析を通じて、課題の発見や改善策の立案が可能になります。さらに、勘や経験ではなくデータに基づいた戦略的な意思決定が行えるため、市場変化への対応力も高まります。
加えて、補助金を活用して導入したシステムの投資効果を分析することで、今後の補助金活用やシステム投資の判断にも役立てることができます。
会計システム導入に役立つ補助金はIT導入補助金
会計システムを入れたいけれど初期費用が気になる中小企業や小規模事業者は多いはずです。そんなときに活用できるのがIT導入補助金です。会計ソフトやクラウドサービスの導入費用の一部を補助してくれるため、資金負担を抑えながらデジタル化を進められます。ここでは、会計システム導入に役立つIT導入補助金の仕組みについて、重要なポイントを順に解説します。
IT導入補助金とは
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を目的として、会計ソフトなどのITツール導入費用を支援する制度です。対象となるITツールは事務局の審査を受けて公式サイトに登録されたものに限られます。
また申請者は、事務局に登録されたIT導入支援事業者と連携し、課題整理から申請書作成、導入後のフォローまでサポートを受けられます。会計システムも登録ITツールであれば補助の対象となります。
IT導入補助金の対象
申請対象は、日本国内で登記し事業を行う中小企業・小規模事業者です。製造業、建設業、卸売業、小売業、サービス業、医療・介護、学校法人、NPO法人など幅広い業種が含まれます。資本金や従業員規模が一定以下であることが条件で、個人事業主も該当します。会計システム導入が生産性向上や業務効率化、インボイス対応などにつながる点も重要です。
IT導入補助金の補助率と補助額
補助率や金額は申請枠によって異なります。インボイス枠(電子取引類型)では、中小企業や小規模事業者は補助率2/3以内、その他の事業者は1/2以内となっています。
補助額は下限なし〜350万円以下が目安です。セキュリティ対策推進枠では補助額5万円〜150万円の範囲で、小規模事業者は2/3以内、中小企業は1/2以内が補助率になります。このように目的や規模で上限が変わる仕組みです。
IT導入補助金の種類
IT導入補助金には目的に応じた複数の枠があります。会計システム導入に使いやすいのが「通常枠」で、幅広いシステムに対応します。インボイス制度に対応した会計ソフトを入れる場合は「インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)」が適しています。
サイバー攻撃対策には「セキュリティ対策推進枠」、商店街や複数企業が一体で取り組む場合は「複数社連携IT導入枠」が用意されています。会計システムでは通常枠やインボイス枠の活用が中心となります。
補助金の対象となる会計システム

会計システム導入に活用できる補助金について、どのような会計システムが対象となるのか、その種類と特徴を解説します。補助金の対象となるシステムは、その機能や導入形態によって異なります。ご自身の事業に合ったシステムを選ぶための参考にしてください。
クラウド会計ソフト
クラウド会計ソフトは、インターネット環境があればどこからでもアクセスでき、常に最新の機能が利用できる点が最大のメリットです。導入が容易で、初期費用を抑えられる場合が多いことも補助金活用の観点から魅力的です。また、データの自動バックアップや複数人でのリアルタイムな情報共有も可能です。
多くのIT導入補助金では、クラウド型の会計ソフトが対象となりやすい傾向にあります。具体的なソフトとしては、「freee会計」「マネーフォワード クラウド会計」「弥生会計 オンライン」などが挙げられます。これらのソフトは、インボイス制度への対応はもちろん、経費精算や請求書発行といった周辺機能も充実しているため、補助金を活用して導入する価値は高いと言えるでしょう。
パッケージ型会計ソフト
パッケージ型会計ソフトは、自社のコンピューターにインストールして利用するタイプの会計ソフトです。一度購入すれば、追加の月額利用料がかからない永続ライセンスが一般的であり、カスタマイズ性が高いという特徴があります。
インターネット環境がない場所でも利用できるため、セキュリティ面を重視する場合や、独自の運用ルールに細かく対応させたい場合に選ばれることがあります。
ただし、IT導入補助金などの一部の補助金では、クラウド型が優先される傾向にあるため、パッケージ型ソフトを検討する際は、補助金の要件を事前にしっかり確認することが重要です。導入・更新にはある程度の専門知識が必要となる場合もありますが、長期的に見ればコストを抑えられる可能性もあります。
インボイス制度対応会計システム
2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応は、企業にとって必須となりつつあります。補助金対象の会計システムも、この制度対応が重要な条件です。
対応システムでは、適格請求書発行事業者の登録番号管理や、区分経理による正確な消費税計算、インボイス形式の請求書・領収書発行、仕訳の自動化などの機能を備えています。
導入時は、自社の取引形態や必要機能(軽減税率・複数税率対応など)を整理し、要件を満たすかを確認することが重要です。さらに、導入後のサポート体制が充実しているかどうかも、安心して運用するための大切なポイントです。
会計システムを独自開発する際に役立つ補助金
会計システムを自社の業務に合わせて独自開発したい場合、初期費用や開発期間が大きな負担になります。そのため、システム導入や開発費用を補助してくれる制度の活用が重要です。ここでは、自社仕様の会計システム開発に役立つ代表的な補助金として「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」と「中小企業省力化投資補助金(一般型)」を紹介します。
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)は、ポストコロナなど事業環境の変化に合わせて経営基盤を見直す取り組みを支援する制度です。既存事業の質を高める「深化」と、新たな展開を目指す「発展」のどちらにも活用でき、会計システムを独自に開発する取り組みも対象になり得ます。
助成対象経費が幅広く、システム等導入費や専門家指導費、設備費用などをまとめて申請できる点が特徴です。助成限度額は800万円で、助成率は通常3分の2以内となります。
賃金引上げ計画を策定し実施した場合は上限が引き上げられ、小規模事業者は5分の4以内まで支援割合が高まります。年度内に複数の募集回があり、それぞれ申請期間が明確に定められているため、準備には余裕を持つことが求められます。
関連記事:【2025年度版】事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)とは?
中小企業省力化投資補助金(一般型)
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、人手不足の解消や業務効率の改善に向けた省力化設備やシステム導入を支援する制度です。会計業務の自動化やクラウドベースの処理システムの独自開発も対象になりやすく、仕訳入力の自動化や請求管理の効率化などを目指す企業に活用しやすい内容です。
補助上限額は従業員数に応じて変わり、5人以下なら750万円、6〜20人は1500万円、21〜50人は3000万円と段階的に設定されています。さらに賃上げに取り組む企業には上限額が引き上げられる特例もあります。補助率は中小企業で1/2、小規模事業者は2/3とされ、1500万円を超える部分は1/3となります。
対象経費にはシステム構築費や専門家費用、クラウド利用料などが含まれ、会計システム開発に必要な支出を幅広くカバーできます。申請には生産性向上や賃上げの計画が求められ、数値根拠を示すことが重要です。
関連記事:【2025年度版】中小企業省力化投資補助金〈一般型〉完全ガイド
補助金の申請方法

ここからは、会計システム導入に活用できる補助金を実際に申請する方法について、具体的なステップを解説します。申請期間、必要書類、そして申請から交付までの流れを理解し、スムーズな申請を目指しましょう。
申請期間
補助金の申請には、それぞれ公募期間が定められています。IT導入補助金は、年度によって公募回数や期間が変動するため、常に最新の情報を確認することが重要です。多くの場合、公募要領が経済産業省や各事業の事務局ウェブサイトで公開されます。
例えば、IT導入補助金は年間を通じて複数回の公募が行われることが一般的ですが、公募開始時期や締切日は事前に告知されます。申請を検討している方は、まず対象となる補助金の公式サイトで公募要領を確認し、申請期間を把握することから始めましょう。年度途中で制度が変更される可能性もあるため、定期的な情報収集が成功の鍵となります。余裕を持った準備と申請を心がけてください。
必要書類
補助金の申請には、一般的に以下の書類が必要となります。特にIT導入補助金では、事業計画書の作成が重要視されます。書類の準備は時間がかかる場合があるため、早めに着手しましょう。
- 事業計画書
- 見積書
- 会社概要・登記簿謄本
- 決算情報(直近数期分)
- 補助金申請書
- その他
IT導入補助金の場合、交付申請システムを通じてこれらの書類をアップロードします。事業計画書の作成においては、補助金の交付目的(生産性向上など)に合致する内容を具体的に記述することが採択のポイントとなります。
申請の流れ
補助金の申請から補助金が交付されるまでの一般的な流れは、以下のようになります。IT導入補助金を例に解説します。
事前準備
- 補助金の公募要領を確認し、自社が対象となるか、申請期間はいつかを確認します。
- 交付申請システムのアカウントを作成し、GビズID(※)を取得します。
- 導入したい会計システムの見積もりを取得します。
- 事業計画書を作成します。
(※GビズIDは、1つのID・パスワードで様々な行政サービスにログインできる共通基盤です。)
交付申請
交付申請システムを通じて、必要書類を添付して申請を行います。申請期間内に提出する必要があります。
審査
事務局によって、提出された申請内容や書類の不備がないか、要件を満たしているかなどの審査が行われます。
採択
審査の結果、採択された場合は採択通知が届きます。
導入・実績報告
採択された後、実際に会計システムを導入・購入します。導入完了後、速やかに実績報告書を提出し、事業実施の報告を行います。
補助金交付
実績報告が承認されると、補助金が交付されます。この流れを理解し、各ステップを丁寧に進めることが、補助金を確実に受け取るために不可欠です。
まとめ
ここまで、会計システム導入に役立つ補助金の種類から、対象となる会計システム、申請方法、そしてシステム選定のポイントまで、幅広く解説してきました。
補助金を活用することで、これまで導入を諦めていた高機能な会計システムも、ぐっと身近なものになります。特にインボイス制度への対応が急務となっている今、これを機に自社の会計業務を見直し、効率化とコスト削減を同時に実現しましょう。
株式会社イチドキリでは、会計システムの導入や独自開発を検討する企業のみなさまに向けて、最適な補助金選びから申請書の作成、事業計画の整理まで一貫して支援しています。IT導入補助金をはじめ、事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)や中小企業省力化投資補助金(一般型)など、会計分野に活用しやすい制度は多く、費用負担を抑えて業務を効率化する大きな後押しになります。
元エンジニア出身の専門家が課題に寄り添いながら最適な方法を提案し、事業の成長につながるサポートを行っています。補助金を活用した発展を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
記事の執筆者
株式会社イチドキリ 代表取締役
徳永 崇志
兵庫県の実家で、競走馬関連事業を展開する中小企業を営む家庭環境で育つ。
岡山大学を卒業後、大手SIerでエンジニアを経験し、その後株式会社リクルート法人営業に携わる。株式会社レアジョブではAIを用いた新規事業の立ち上げに従事し、リリース1年で国内受験者数No.1のテストに導く。株式会社素材図書で役員を務めた後、株式会社イチドキリを設立。中小企業向けに、補助金獲得サポートや新規事業開発や経営企画のサポートをしている。Google認定資格「Google AI Essentials」を2024年に取得済。
