1. 省力化投資補助金(一般型)とは?
省力化投資補助金(一般型)は、深刻な人手不足や業務負担を抱える中小企業等が、デジタル技術や自動化機器を活用した設備投資を行う際に活用できる国の支援制度です。導入コストを削減しながら生産性向上や付加価値の創出を目指し、最終的には*賃上げ(従業員の給与引上げ)*につなげることを目的としています。
本制度は以下の特徴があります。
- 補助金額が高額:一般型は最大1億円まで補助される場合があり、大規模投資も視野に入れられる
- 幅広い業種で利用可能:製造業だけでなくサービス業や小売業など、多岐にわたる中小企業が対象
- 自由度の高い投資計画:自社のニーズに合わせた設備・システム導入を組み合わせることができる
「省力化投資補助金」には、導入機器があらかじめ決まっている「カタログ型」と、自由に選定できる「一般型」の2タイプがあります。一般型では独自の設備投資に対応できる一方、申請書のボリュームや審査のハードルが比較的高めとなる点に注意しましょう。
2. 補助対象となる事業・設備の具体例
(1) 補助対象となる取組のポイント
- 人手不足解消や省力化に直接つながること
- 既存事業の効率化、業務プロセスの改善を目的とした投資
- 導入設備の費用が50万円(税抜)以上であること
製造業の工場内自動化から、サービス業の業務効率化システム導入まで、投資内容が明確であれば幅広く補助対象になり得ます。一方で建物・不動産購入費やオフィス家具など、通常経営に必要な消耗的経費は補助対象外です。
(2) 具体的な設備投資例
- 製造業: 産業用ロボット、自動搬送装置(AGV)、自動検査機器、IoTを活用した生産管理システムなど
- サービス業: 予約管理の自動化システム、顧客管理(CRM)ツール、在庫管理の自動化、RPA(事務作業自動化ソフト)など
- 業種問わず: AIによるデータ分析ツール、複数店舗の在庫統合管理システム、遠隔監視システムなど
各経費には上限割合や対象外となる条件も設定されています。たとえば、中古機器や汎用事務用品、社内人件費などは原則補助対象にならないため、あらかじめ公募要領で詳細を確認してください。
3. 申請から交付までの流れ
省力化投資補助金(一般型)を利用する際は、主に以下のステップで手続きを進めます。
(1) 事前準備(GビズID取得)
電子申請には「GビズIDプライムアカウント」が必須です。取得には2~3週間かかることが多いため、締切間近に慌てないよう早めの登録を行いましょう。
(2) 申請書類の準備
- 事業計画書: 省力化の具体的内容と効果を数値で示す(業務工数○%削減、売上○%アップ等)
- 決算書(直近2期分): 事業の安定性や資金調達力を示すため
- 見積書(2社以上): 補助対象となる設備やシステムの比較検討を行った証明
- 労働者名簿や賃金台帳: 従業員数や賃金状況を確認するため
(3) 電子申請
公募要領に示された期間内に、オンラインシステム上で必要事項を入力・書類を添付して提出します。締切を過ぎると申請無効となるため、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。
(4) 審査・採択発表
提出された事業計画書は、採点基準に基づいて審査されます。問題なく採択されれば、後日「交付申請→交付決定」の手続きを経て正式に補助事業が開始となります。採択から交付決定まで1~2か月程度かかる場合が多い点に留意してください。
(5) 事業実施(設備導入・支出)
交付決定を受けた後、設備の発注・設置やシステム構築を進めます。交付決定前に契約・発注した経費は補助対象外になるため、スケジュールには注意が必要です。支払いは原則銀行振込で行い、領収書や振込票、発注書・納品書などを整理しておきましょう。
(6) 実績報告・補助金の受領
事業完了後、速やかに実績報告書を提出します。内容確認が済めば、確定した補助金額が振り込まれます。なお、補助事業完了後も5年間にわたって賃上げ状況や生産性向上の報告を行う義務があります。
4. 採択を勝ち取るためのポイント
(1) 省力化・生産性アップの効果を数値で示す
「従業員の作業時間を○%削減」「月次生産数を○%増加」など、定量的なKPIを設定することが重要です。審査員に「投資効果が高い」と分かりやすく伝えましょう。
(2) 無理のない事業計画・資金計画
資金の自己負担分を確保できるか、導入スケジュールは現実的かなど、実施体制の妥当性が評価対象となります。絵に描いた餅ではなく、実行可能性を重視した計画を立てましょう。
なお自己資金が手元にない場合は、銀行など金融機関からの融資を有効活用することが一般的です。「融資に積極的な銀行・信用金庫」については、下記の記事が参考になるので、気になる方はご覧ください。
参考:「融資に積極的な銀行・信金」と「銀行の選び方」を融資のプロ解説
(3) 政策的な加点措置の活用
- 賃上げ計画: 従業員還元をきちんと盛り込むと加点対象
- 事業承継・M&A: 後継者不足解消の取り組みにも加点が付与される場合あり
- 女性活躍推進・子育て支援: 「えるぼし」や「くるみん」認定でプラス評価
こうした加点要素を積極的に取り入れることで、採択率を高められます。
5. 申請時に押さえておきたい注意点
- 補助金の要件を満たせない場合の返還リスク一定期間にわたり労働生産性の向上や賃上げを実行する義務あり達成できない場合、補助金返還が求められるケースも
- 見積書は2社以上から取得「比較検討した証拠」として必須価格だけでなくスペック・導入効果を比較検討し、妥当性を示す
- 交付決定前の発注・支払いは対象外採択が内定していても正式決定まで契約は控える事業期間内に支出を完了させる必要があるため、スケジュール管理が鍵
- 報告義務・事後チェックへの対応事業完了後も5年間の経過報告(売上・生産性・賃金動向など)報告を怠るとペナルティを受ける場合がある
6. まとめ
省力化投資補助金(一般型)は、中小企業が抱える「人手不足」や「低生産性」といった課題を解消し、さらなる業績向上や社員の待遇改善を実現するための強力なサポート制度です。導入時の設備費用を大幅に削減できるため、大掛かりなシステム導入やロボット導入など従来はハードルが高かった投資にもチャレンジしやすくなります。
しかし、その分申請書類の作成や報告義務などの手続きが複雑になる傾向にあります。採択を勝ち取るためには的確な計画と審査ポイントの理解が不可欠です。ぜひ本記事のポイントを参考に、自社に合った省力化投資補助金(一般型)の活用を検討してみてください。
- 早めにGビズIDを取得して、申請スケジュールに余裕を持つ
- 導入効果を数値化し、現実的な事業計画を作成
- 加点要素(賃上げ・事業承継・女性活躍等)を積極的に活用
- 導入後も長期的なフォローアップに対応できる体制を整える
これらをしっかり押さえれば、補助金の活用による生産性アップと人材確保、さらには企業の成長加速が期待できます。国や自治体の支援策を上手に取り入れ、競争力ある企業体質を目指しましょう。
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、人手不足という経営課題を解決しつつ事業の効率化・成長を図る絶好のチャンスです。適切な準備と計画立案を行い、ぜひこの補助金制度を上手に活用して自社の生産性向上と競争力強化、さらには従業員の待遇改善につなげていきましょう。
引用元:中小企業省力化投資補助金
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記事の執筆者
株式会社イチドキリ 代表取締役
徳永 崇志
兵庫県の実家で、競走馬関連事業を展開する中小企業を営む家庭環境で育つ。
岡山大学を卒業後、大手SIerでエンジニアを経験し、その後株式会社リクルート法人営業に携わる。株式会社レアジョブではAIを用いた新規事業の立ち上げに従事し、リリース1年で国内受験者数No.1のテストに導く。株式会社素材図書で役員を務めた後、株式会社イチドキリを設立。中小企業向けに、補助金獲得サポートや新規事業開発や経営企画のサポートをしている。Google認定資格「Google AI Essentials」を2024年に取得済。