ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が新たな製品開発や生産プロセス改善を行うための設備投資を支援する制度です。特に、新規性・革新性のある取り組みに対して重点的に補助が行われます。
本補助金を活用すれば、事業の成長を加速させるための設備投資や技術導入が可能になります。しかし、申請には厳格な審査基準があり、事業計画の明確さや市場ニーズの分析が求められます。本記事では、ものづくり補助金19次公募の詳細をわかりやすく解説し、申請のポイントや成功のコツをご紹介します。
1. 補助対象となる事業者の条件(中小企業・小規模事業者の定義)
中小企業者の定義
本補助金の対象となる事業者は、日本国内に本社と事業実施場所を有する中小企業者等に限られます。
中小企業者とは、業種ごとに資本金または従業員数で以下を満たす会社または個人事業主です。
| 業種 | 資本金と従業員数 |
|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業など | 資本金3億円以下 または 常時使用する従業員300人以下 |
| 卸売業 | 資本金1億円以下 または 従業員100人以下 |
| サービス業 | 資本金5,000万円以下 または 従業員100人以下(※ソフトウェア業等は資本金3億円以下または従業員300人以下) |
| 小売業 | 資本金5,000万円以下 または 従業員50人以下 |
| 旅館業 | 資本金5,000万円以下 または 従業員200人以下 |
小規模企業者・小規模事業者の定義
上記中小企業のうち従業員が特に少ない事業者は「小規模事業者」として位置づけられます。
具体的には以下を満たす会社または個人事業主です。
| 業種 | 従業員数 |
|---|---|
| 製造業・その他業種 | 常時使用する従業員の数が20人以下 |
| 商業・サービス業 | 常時使用する従業員の数が5人以下 |
| 宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数が20人以下 |
※中小企業に該当しない公益法人、医療法人、任意団体などは補助対象外です。
また、特定非営利活動法人(NPO)や社会福祉法人も一定条件を満たせば対象になります(従業員300人以下等)。
2. 補助金の申請要件(付加価値増加率、給与支給総額、最低賃金要件)
第19次公募では、申請にあたり事業計画期間中の成果目標として以下の「基本要件」を満たす必要があります。
| 基本要件 | |
|---|---|
| ①付加価値額増加要件 付加価値額 (=営業利益+人件費+減価償却費) | 補助事業完了後から3~5年の計画期間に、企業全体の付加価値額の年平均成長率を3.0%以上にする。申請時に自社で3%以上の目標を設定し、最終年度にその目標を達成する必要があります。 |
| ②給与支給総額増加要件 | 補助事業完了後の3~5年で、従業員および役員の給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上にする。 または、 1人あたり給与支給総額の年平均成長率を所在都道府県の最近5年間の最低賃金上昇率以上にすること。 |
| ③事業所内最低賃金要件 | 補助事業完了後の計画期間において、事業所内の最低賃金(会社内で最も低い時給)を毎年、地域の最低賃金より30円以上高い水準に維持すること。この目標値も申請時に設定・周知し、達成できなければ補助金の返還を求められます。 |
3. 補助額と補助率(従業員数別の補助上限額と補助率)
補助上限額: 第19次公募では申請する事業枠によって補助金の上限額が異なります。主な事業枠は以下の2種類です。
(1)製品・サービス高付加価値化枠(一般型)
従業員規模に応じて上限額が設定されています(補助下限額は一律100万円)。
| 従業員数 | 補助上限 |
|---|---|
| 従業員5人以下 | 750万円 |
| 従業員6~20人 | 1,000万円 |
| 従業員21~50人 | 1,500万円 |
| 従業員51人以上 | 2,500万円 |
(2)グローバル枠
海外事業(輸出や現地投資等)による生産性向上を図る取組向けの枠です。、
上限額は一律 3,000万円(補助下限100万円)です。従業員数による差はありません。
(3)補助率
中小企業か小規模事業者かで補助率が異なります。
中小企業の場合は補助対象経費の 1/2。
小規模事業者(および事業再生計画認定を受けた「再生事業者」)の場合は 2/3 が補助されます。例えば小規模事業者であれば経費の3分の2まで補助金が出る形です。
(4)特例措置による上乗せ
さらに、第19次公募では大幅な賃上げに取り組む企業に対し補助上限額を引き上げる特例があります。賃上げ目標(後述の賃上げ加点要件を上回る年平均+6%など)を設定・達成する計画で申請すると、以下の額を上乗せ可能です。
- 従業員5人以下: +100万円 上乗せ(例: 一般枠750万→最大850万円)
- 従業員6~20人: +250万円 上乗せ(例: 一般枠1000万→最大1250万円)
- 従業員21~50人: +1,000万円 上乗せ従業員51人以上: +1,000万円 上乗せ
特に今回から「省力化オーダーメイド枠」が廃止され2枠体制となった点や、大幅賃上げによる上限引上げ措置がある点が最新の特徴です。
4. 補助対象経費と対象外経費
(1)補助対象経費
本補助金で認められる経費は、公募要領で定められた事業実施に必要な投資に限られます。主な補助対象経費の科目は以下の通りです。
| 機械装置・システム構築費(必須) | 生産設備や試作開発に必要な機械装置の購入費、ソフトウェア開発・導入費等(クラウドサービス利用料含む)。本補助金ではこの設備投資が必須であり、単に設備を導入するだけでなく新製品・サービスの開発に資するものである必要があります。 |
| 技術導入費 | 新技術の導入に伴うコンサルティング費用や知的財産権の取得・導入費等。 |
| 専門家経費 | 専門家・技術者の指導謝金や外部人材の招聘費用等。 |
| 運搬費 | 設備の輸送費用等。 |
| クラウドサービス利用費 | 生産性向上に必要なクラウドサービスの利用料(ソフトウェアのサブスク料金等)。 |
| 原材料費 | 試作品の製作に使う原材料・部品の購入費用。 |
| 外注費 | 試作の一部を外部に委託する費用、部品加工の外注費など。 |
| 知的財産権等関連経費 | 特許出願や権利化に要する費用、技術ライセンス料等。 |
| (グローバル枠のみ)海外展開経費 | 輸出事業の場合の海外渡航費、通訳翻訳費、海外での広告宣伝・展示会出展費用等。 |
(2)補助対象外経費
上記に該当しない経費や、日常的経費については補助対象となりません。公式要領で「補助対象外」と明示されている主な経費例は次の通りです。
| 製品の製造販売に直接かかる経費 | 補助事業期間中に販売する製品の製造費(量産の材料費や在庫仕入れ等)は対象外です(※試作品の原材料費は対象)。 |
| 汎用性の高い備品 | 事務所の家具やパソコン、プリンター、タブレット端末、スマートフォン、汎用的な3Dプリンター等、事業専用と断定できない汎用品の購入費。 |
| 車両費 | 自動車など車両の購入費や修理・車検費用。 |
| 専門サービス費 | 税理士・会計士への決算書作成費用、弁護士費用(訴訟等)。 |
| 自社人件費 | 自社社員の人件費(例:自社内で行うソフトウェア開発作業の人件費)は計上不可。 |
| 関連事業者への支払い | 代表者や役員が同一の他社、資本関係のある関連会社への支払いも認められません。 |
5. 申請スケジュール(公募開始日、締切日、採択発表日、事業実施期間)
公募期間: 第19次公募は 令和7年2月14日(金)付で公募開始が告知されました。
ただし、この日からすぐ申請できるわけではなく、電子申請の受付開始日は後述の通り4月になります。
- 電子申請開始: 2025年4月11日(金)17:00から受付開始。
- 申請締切: 2025年4月25日(金)17:00(時間厳守)。この締切までに電子申請を完了する必要があります。
採択発表日: 応募締切後、書面審査・面接等の選考を経て2025年7月下旬頃に採択結果が公表される予定です。portal.monodukuri-hojo.jp
事業実施期間: 採択後交付決定を受けてから実際に事業を遂行する期間は、公募要領で以下のように定められています。
- 高付加価値化枠: 交付決定日から10か月以内(ただし採択発表日から起算して12か月後の日までが上限)
- グローバル枠: 交付決定日から12か月以内(採択発表日から起算して14か月後の日まで)
例えば2025年7月下旬に採択発表→8月に交付決定された場合、一般枠では遅くとも2026年7月頃までに事業完了報告を行う必要があります。
事業期間内に実績報告(支出証憑などの提出)まで完了しないと、採択取消や交付決定取消となるので注意が必要です
6. 審査のポイント(審査基準、加点要素)
(1)審査基準
応募案件は、まず書面審査において定量・定性的な評価項目に沿って点数化されます。第19次公募の主な審査項目は以下の通りです。
- 適格性: 補助対象者・事業内容・要件を満たしているか。応募要領の条件に合致しない場合は失格になります。
- 経営力: 自社の経営目標が具体的かつ戦略的に示され、本事業が経営戦略の中で位置づけられているか。市場や自社の強み弱み分析に基づいた計画になっているか等が見られます。
- 事業性: 本事業により高い付加価値の創出や賃上げという目標が設定され、その実現可能性が高いか。課題設定と解決方策が適切か、収益見込みは妥当かといった点です。
- 実現可能性: 必要な技術力を有し競合優位性があるか、本事業遂行のための組織体制(人材・財務含む)は十分か。直近の財務状況や資金計画も考慮されます。
- 政策面の効果: 地域経済への波及効果や、新規性・独自性、成長性といった政策目標への寄与度。例えば地域の特性を活かし地域経済を牽引しうる事業か、ニッチ分野で独自の取り組みか等が評価されます。
- 大幅賃上げ計画の妥当性(該当者のみ): 賃上げ特例を申請する場合、その計画内容と算出根拠が具体的かつ妥当か。
これらの審査基準に基づき、有識者委員会が書面審査点を付与し、高得点の案件が採択候補となります。必要に応じて書面通過者には追加の口頭審査(ヒアリング)も実施されます。
(2)加点要素
上記の基準点に加えて、特定の要件を満たす事業者には加点が付与されます。第19次公募では最大6項目まで該当加点を申請可能で、審査で条件合致と認められれば各々所定の点数が加算されます。
主な加点項目は次のとおりです(一部抜粋)
- 経営革新計画の承認取得: 応募締切時点で有効な「経営革新計画」の承認を受けている場合。
- パートナーシップ構築宣言: 大企業との共存共栄を図る「パートナーシップ構築宣言」をポータルサイトで公表している場合。
- 事業継続力強化計画の認定: 防災・減災に取り組む「事業継続力強化計画」またはその連携版の認定を取得している場合。
- えるぼし認定: 女性活躍推進企業としての「えるぼし認定」を取得済みの場合。
- くるみん認定: 子育て支援企業の「くるみん認定」を取得済みの場合。
- 成長加速化マッチング登録: 経産省「成長加速化マッチングサービス」に登録し課題を公開している場合。
仮に加点を得て採択された後、その要件を実現できなかった場合は、中小企業庁所管の他補助金申請時に減点措置を受ける(18か月間)ペナルティ規定もあります。したがって加点目当てで無理な目標を掲げることは推奨されません。
7. 申請方法(電子申請の要件)
電子申請のみ受付: ものづくり補助金の申請は電子申請システム(jGrants)から行います。紙での申請書郵送などは受け付けておらず、オンラインのみの手続きです。
申請手順: 公募要領には電子申請システムの操作方法や提出書類の形式が示されています。事業計画書は所定様式の項目に沿って入力し、補足資料(図表や写真など)はA4で3ページ以内のPDFにまとめて添付します。提出書類一式(事業計画書や加点証明書類など)は指定のファイル名・PDF形式でアップロードする決まりです。申請の際は入力内容や添付ファイルに不備がないかを十分確認し、締切時間までに送信完了してください。
8. まとめ:ものづくり補助金について
ものづくり補助金は、自社の技術開発やサービス創出を加速させる絶好の資金支援策です。補助金獲得には周到な準備が求められますが、採択されれば開発費用の半分程度が国から支給されるため、事業成長の大きな追い風となるでしょう。ぜひ本記事で紹介したポイントを踏まえて計画を練り、チャレンジしてみてください。
お問い合わせ・無料相談
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引用元:ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト
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記事の執筆者
株式会社イチドキリ 代表取締役
徳永 崇志
兵庫県の実家で、競走馬関連事業を展開する中小企業を営む家庭環境で育つ。
岡山大学を卒業後、大手SIerでエンジニアを経験し、その後株式会社リクルート法人営業に携わる。株式会社レアジョブではAIを用いた新規事業の立ち上げに従事し、リリース1年で国内受験者数No.1のテストに導く。株式会社素材図書で役員を務めた後、株式会社イチドキリを設立。中小企業向けに、補助金獲得サポートや新規事業開発や経営企画のサポートをしている。Google認定資格「Google AI Essentials」を2024年に取得済。