中小企業が基幹システムを導入する際、ネックとなりやすいのが多額の初期費用です。業務の効率化やDXを進める上で必要性は理解していても、資金調達が難しく計画が進まないケースも少なくありません。
そこで活用したいのが、国や自治体が実施する補助金制度です。制度の仕組みや選び方を正しく理解すれば、導入の負担を軽減しながら事業の成長に弾みをつけられます。本記事では、基幹システム導入に活用できる代表的な補助金や申請時のポイントについて、採択率を高めるヒントとともに詳しく解説します。
基幹システム導入に補助金を活用するメリット

基幹システムの導入は、企業経営の効率化や成長戦略の実現に不可欠な要素です。しかし初期投資が大きな負担となり、計画が進まないケースも珍しくありません。
公的補助金を活用すれば、コスト面の障壁を取り除きながら、デジタル化や業務改善を進められます。ここでは、基幹システム導入時に補助金を活用する具体的なメリットについて順番に見ていきましょう。
導入コストの負担を軽減できる
基幹システムは業務全体を支える重要な基盤であり、導入時には多額の初期投資が必要になります。中小企業や小規模事業者にとって、まとまった資金を用意するのは大きな課題です。そこで注目したいのが、国や自治体が実施する補助金制度です。
補助金を活用することで、自己負担が大幅に減り、計画していた予算内で高機能なシステムを導入できる場合が増えています。とくにIT導入補助金やものづくり補助金は、経費の半分以上を支援する仕組みが整えられているため、多くの中小企業が利用を検討しています。
資金的な不安が軽減されれば、新規設備や追加機能の導入も視野に入れやすくなり、長期的な経営計画の柔軟性が高まるでしょう。支出の負担を抑えつつ成長のための投資が可能となる点が大きな魅力です。
最新ITツールの導入で生産性を高める
業務効率化や品質向上の実現には、基幹システムの刷新とともに、最新のITツールの導入が欠かせません。補助金制度を利用すれば、従来なら高額で手が届かなかったクラウドサービスや高度な業務支援システムも選択肢に含められるようになります。
たとえば、受発注管理や在庫管理の自動化によって人的作業が削減され、ヒューマンエラーの発生率も低下します。さらに、営業活動や経営状況を可視化するダッシュボード機能を活用すれば、迅速な意思決定や業務改善も可能です。
限られたリソースで高いパフォーマンスを引き出せるため、組織全体の生産性向上につながります。結果として、従業員一人ひとりのモチベーション向上や顧客満足度の向上にも寄与し、より持続的な成長が実現しやすくなるでしょう。
デジタル化・DXの第一歩として有効
企業におけるデジタル化やDX推進は、もはや避けられない課題となりつつあります。法改正や市場環境の変化に対応し続けるためには、紙や手作業中心の運用から脱却し、デジタル基盤を整備する必要があります。
基幹システムの導入はその土台となるものであり、補助金を活用して導入することで、コスト負担を抑えながらDXに向けた体制を構築可能です。たとえば、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応にも役立ち、法令順守の観点からも重要性が増しています。
さらに、補助金の対象にはセキュリティ強化やクラウド移行など、DX推進に関連する支援項目が含まれている場合もあり、時代に即した経営への移行が容易になります。未来志向の経営に向けて、一歩を踏み出す選択肢として大いに活用しましょう。
経営改善と競争力強化につながる
補助金を活用して基幹システムを導入すると、業務プロセスの標準化や効率化が進み、経営全体のパフォーマンスが向上します。業務の見える化によって、問題点の発見や改善策の立案がスムーズになり、結果的に利益率の向上にもつながるでしょう。
さらに、最新のシステムによるスピーディーな対応力や高品質なサービス提供が可能になれば、顧客満足度の向上や新規顧客の獲得が期待できます。市場環境が変化する中で、柔軟に対応できる経営体制を整えられる点も強みです。
資金面での支援を受けながら競争力のある企業を目指せるため、経営の安定性を高めつつ成長戦略の実現に近づけます。長期的な視野での競争力強化を目指すうえで、補助金の活用は非常に有効です。
基幹システムに使える補助金の種類

基幹システム導入を支援する補助金は複数用意されており、制度ごとに支援対象や条件が異なります。制度の特徴や申請要件を理解し、自社の目的や経営状況に適したものを選ぶことが重要です。
的確な制度選びが採択率の向上につながり、無駄な手間やコストも防げます。ここでは代表的な5つの補助金について、それぞれのポイントを詳しく解説します。
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)
「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」は、都内に本店または支店を持つ中小企業や小規模事業者が対象の制度です。新規の基幹システム導入や既存システムの改修を行う際に活用できる仕組みとして注目されています。
助成率は最大3分の2で、上限は800万円まで設定されており、特定の賃上げ計画を達成するとさらに補助率が引き上げられる場合もあります。対象となるのは、売上高が前年より減少している事業者や営業損失を計上している事業者、または米国関税措置の影響が見込まれる事業者です。
公募要領には具体的な決算期比較の条件も明記されているため、詳細な確認が必要です。経営状況が厳しい状況にある企業にとっては、事業基盤を強化しつつ業務の効率化やデジタル化を進める大きな後押しとなるでしょう。
中小企業省力化投資補助金
「中小企業省力化投資補助金」は、人手不足に悩む企業の課題解決を目的とした制度です。新規に基幹システムを開発し、生産性向上や省人化を図る投資が対象となります。
補助率は最大3分の2で、従業員規模に応じて補助上限額が設定されており、最大で1億円規模まで支援されるケースもあります。申請には、生産性や賃金水準の具体的な向上目標を設定する必要があり、達成できない場合は一部返還義務が生じるため注意が必要です。
たとえば、労働生産性の年平均4%以上の成長や、給与支給総額の年平均2%以上の増加などが目安とされています。人手不足の深刻化が進む中で、デジタル技術を活用した省力化や業務自動化を進めたい企業にとっては、非常に効果的な選択肢です。
ものづくり補助金
「ものづくり補助金」は、新製品の開発や業務プロセスの高度化など、付加価値向上につながる投資を支援するための制度です。基幹システムを活用し、業務効率や品質の向上を狙ったプロジェクトも対象となります。
補助率はおおむね2分の1で、従業員規模に応じて上限額が異なり、最大4,000万円まで支援が可能です。申請時には事業計画の策定が求められ、将来にわたる付加価値額の増加や雇用の維持・向上など、具体的な目標を設定する必要があります。
審査では事業の革新性や経営改善効果が重視されるため、採択されるためには精度の高い計画書が欠かせません。既存事業の強化や、競争力を高めるためのシステム投資を考えている企業に向いています。
新事業進出補助金
「新事業進出補助金」は、既存事業とは異なる新しい市場や高付加価値事業への挑戦を支援する制度です。新規に基幹システムを開発し、新たなビジネス領域への参入を目指す場合に活用可能です。
補助率はおおむね2分の1で、従業員数に応じて最大9,000万円まで支援が受けられる特例も設けられています。申請にあたっては、付加価値額や給与支給総額の目標値を定めるほか、賃金水準やワークライフバランスに関する要件も設定されています。
新規市場開拓に伴うリスクを低減しつつ、積極的に成長戦略を描ける点が大きな魅力です。新たな顧客層の獲得や差別化戦略の一環として、基幹システムを活用する計画に適しています。
IT導入補助金
「IT導入補助金」は、中小企業や小規模事業者が既に完成し市場で外販されているITツールを自社に導入し、業務効率化や生産性向上を実現するための制度です。基幹システム導入やクラウドサービス、業務改善アプリケーションの利用費用が対象となります。
補助率は導入内容によって異なりますが、2分の1または3分の2で、最大450万円程度まで支援されるケースが一般的です。申請には、登録されたITベンダーや支援事業者と連携し、システムの仕様や導入目的が補助対象に沿っているかを確認することが求められます。
比較的申請の難易度が低く、採択率も高いため、基幹システムを初めて導入する企業にとって非常に使いやすい制度といえるでしょう。中小企業がデジタル化を進める最初の一歩として選ばれています。
基幹システム補助金の申請で押さえるべきポイント

補助金は計画性と準備の精度が採択の結果を大きく左右します。採択されるためには、単に制度を知るだけではなく、要件や申請手順を理解し、正確かつ戦略的に対応することが重要です。ここでは、基幹システム補助金の申請において意識したい主要なポイントを解説します。
申請の対象となる事業者と条件
補助金制度は誰でも利用できるわけではなく、業種や規模、事業形態によって対象が明確に定められています。たとえば、IT導入補助金の場合は資本金や従業員数の基準があり、製造業やサービス業、医療法人など業種別に異なる上限が設定されているのです。
対象の詳細を理解せずに申請してしまうと、不採択や無効扱いになる可能性が高まります。事前に制度の公式資料や公募要領を確認し、自社が対象に該当するかをチェックすることが第一歩です。
さらに、制度によっては売上減少や最低賃金の水準など追加要件が設けられる場合もあるため、専門家の確認を受けてから書類作成を進めると安心です。こうした確認を怠らずに進めることで、時間や労力のロスを防ぎつつ、確実に採択を目指せる環境を整えましょう。
補助対象となる経費の範囲
申請時には、どの経費が補助対象に含まれるかを理解しておくことが不可欠です。補助金の種類によって対象となる費用項目は異なり、たとえばソフトウェア購入費やクラウド利用料は対象でも、既存の設備改修や消耗品費は認められない場合があります。
IT導入補助金では、ITツールの導入関連費や保守費用までが支援対象に含まれる一方で、単なるハードウェアの購入は上限が低く抑えられています。申請前に対象経費のリストを作成し、見積書や計画書に記載する内容が制度に沿っているか確認することが重要です。
無関係な経費が含まれていると差し戻しや減額の原因となり、結果として計画全体に影響が及びかねません。事前に正確な理解を持ち、書類作成の段階で注意を払うことが申請成功の鍵になります。
採択されやすい事業計画を準備する
審査の際に評価されるのは、申請書の形式的な正しさだけではありません。計画の実現性や波及効果が高いと認められる事業ほど採択されやすくなります。したがって、事業目的や達成目標を具体的な数値やスケジュールで示し、導入後に期待される効果や改善内容を明確にすることが求められます。
とくに、経営改善や売上増加につながる根拠を示すことが重要です。曖昧な表現ではなく、定量的なデータや実績を盛り込むことで説得力が増し、審査担当者に響く計画書となります。
さらに、将来的な雇用拡大や地域経済への貢献といった社会的意義も記載すると、加点評価が期待できるでしょう。しっかりとした計画作成は申請の成否を左右するため、時間をかけて丁寧に練り上げることが重要です。
支援事業者や専門家との連携を重視する
補助金申請においては、登録された支援事業者や専門家との連携が必要なケースが多くあります。制度に精通した専門家や支援事業者と協力することで、申請書の記載漏れや不備を防げるだけでなく、最新の制度改正や加点ポイントなども把握できます。
事業計画のブラッシュアップや必要な証憑類の準備もサポートしてもらえるため、効率的に申請準備が進められるでしょう。連携先は事前に実績や対応範囲を確認し、信頼できるパートナーを選ぶことが大切です。孤立して進めるよりも、サポートを受けることで負担を減らしながら精度の高い申請が可能となります。
スケジュールと申請の流れを把握する
補助金申請は募集期間が限られており、申請タイミングを逃すと次回まで待たなければならないケースもあります。したがって、制度ごとの募集開始日や締切日を把握し、逆算して準備を進めることが肝心です。
さらに、申請後の審査期間や採択発表、交付決定、事業開始時期といった全体のスケジュール感も理解しておくと安心です。申請書の提出後に修正依頼が入る場合もあるため、余裕を持ったスケジュールを設定しておくと慌てずに対応できます。
制度によっては段階的な申請や追加書類の提出が必要な場合もあり、計画通りに進めるには詳細な流れの把握が欠かせません。事前に情報収集を行い、期日管理を徹底してスムーズな申請を目指しましょう。
自社に合った基幹システム補助金の選び方

基幹システム導入に使える補助金は複数ありますが、企業規模や業種、投資目的によって適した制度は異なります。制度選びを誤ると、採択されにくかったり、想定した支援が得られなかったりする場合があるので注意が必要です。ここでは、自社に最適な補助金を選ぶための視点を解説します。
事業規模や業種に応じて選ぶ
補助金の多くは、企業規模や業種に応じて対象要件が定められています。製造業や建設業などでは資本金3億円以下、従業員数300名以下といった基準が用意されている一方で、小規模事業者向け制度では従業員数が数十名以下の事業者のみ対象となる場合もみられます。
業種ごとに申請可能な枠が違うケースもあるため、自社の規模や業態を正確に把握し、それに合致する制度を検討することが重要です。申請要件を満たしていなければ不採択となるリスクが高まります。
事前に公式の基準表や募集要項で自社がどの区分に当てはまるか確認し、対象となる制度をリストアップしておくと、選定作業がスムーズです。正しい枠組みで申請することで、採択率を高める結果につながります。
投資目的に応じて比較する
補助金ごとに支援の目的が異なるため、自社の投資計画と目的が一致しているかを見極める必要があります。たとえば、業務効率化やデジタル化が目的ならIT導入補助金が適していますが、業態転換や新規事業に挑戦する場合は事業再構築補助金が適するでしょう。
さらに、新製品開発や高付加価値化を狙うなら、ものづくり補助金が有効です。補助額の上限や補助率も制度によって差があるため、計画の規模に応じて選ぶと失敗が減らせます。
申請する際は、制度の目的に沿った事業計画を立てることが前提となるため、制度の特徴と自社の目標を照らし合わせて検討しましょう。適切な制度を選べば、事業計画の評価も高まりやすく、採択への道が開けます。
採択率の高い制度を検討する
補助金は制度によって申請数や予算規模が異なり、結果として採択率にも差が生じます。比較的申請数が多いものの採択枠も広いIT導入補助金は高い採択率を誇る傾向があり、初めての申請に向いています。反対に、ものづくり補助金や事業再構築補助金は補助額が大きい分、審査基準が厳しく、採択率が低めになる場合があります。
制度の採択実績や公式サイトで公表されている過去の結果を確認し、無理のない計画で確実に採択される可能性の高い制度を選ぶのも戦略の一つです。無理に高額な制度に挑戦して不採択となるより、実現性の高い計画で堅実に進める方が、結果的に事業の前進につながりやすくなります。
専門家に相談して最適化する
補助金選びに迷った場合は、補助金制度や申請に詳しい専門家に相談することが効果的です。制度の内容や募集要項は頻繁に見直され、初めて申請する企業にとっては分かりにくい部分も多く見受けられます。
専門家に依頼すれば、自社の事業計画や経営状況に応じて最適な制度を提案してもらえるだけでなく、必要書類や申請の流れについても的確なアドバイスが得られます。さらに、申請書の内容を審査の観点からチェックしてもらえるため、採択率を高めるサポートも期待できます。
専門家と連携することで、スムーズな手続きが可能になり、申請に伴う負担も軽減されるため、成功への近道となるでしょう。
まとめ
基幹システムの導入は、業務効率化やDX推進に欠かせない施策です。補助金を活用することで初期投資の負担を抑えながら、競争力のある経営基盤を整えられる点が大きなメリットといえます。本記事では、代表的な補助金の種類や申請時に意識したいポイントを解説しました。制度の特徴や申請条件を理解し、準備を進めることで、より高い採択率が期待できるでしょう。
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新規事業のプロが集まる会社なので、マーケティングでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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参考:初めてでも安心!医療法人・社会福祉法人向け「IT導入補助金2025」|コトセラ
記事の執筆者
株式会社イチドキリ 代表取締役
徳永 崇志
兵庫県の実家で、競走馬関連事業を展開する中小企業を営む家庭環境で育つ。
岡山大学を卒業後、大手SIerでエンジニアを経験し、その後株式会社リクルート法人営業に携わる。株式会社レアジョブではAIを用いた新規事業の立ち上げに従事し、リリース1年で国内受験者数No.1のテストに導く。株式会社素材図書で役員を務めた後、株式会社イチドキリを設立。中小企業向けに、補助金獲得サポートや新規事業開発や経営企画のサポートをしている。Google認定資格「Google AI Essentials」を2024年に取得済。