スマートフォンやタブレットの普及により、業務やサービスを効率化するアプリ開発の需要が高まっています。しかし、開発には大きな費用がかかるため、予算面で悩む企業も少なくありません。
そこで注目されるのが補助金や助成金の活用です。制度を正しく理解して活用すれば、資金負担を軽減しつつ質の高い開発が実現できるでしょう。本記事では、アプリ開発に活用できる補助金や助成金の種類やメリット、注意点、申請の流れまで順に解説していきます。
アプリ開発で使える補助金

アプリ開発に利用できる補助金は、複数の制度が用意されており、それぞれ特徴や対象が異なります。自社の事業方針や目的に合った制度を選ぶことで、開発費用の負担を軽減しながら戦略的に事業を推進できます。
適切な制度を選ぶことで、成長のチャンスを逃さずに済むでしょう。ここでは代表的な4つの制度について、特徴や活用のポイントを詳しく解説します。
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)
「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」は、東京都内の中小企業が対象となる補助金で、既存事業の質の向上や新たな事業展開を後押しする制度です。既存事業の「深化」として、高性能なシステムや機器の導入、既存サービスの品質改善に取り組む場合や、「発展」として、新商品・新サービスの開発や新たな提供方法の導入などが助成対象です。
助成額は最大800万円で、助成率は経営規模に応じて最大4/5まで認められます。申請には東京都内に本店(または支店)を置くことや、売上減少や営業損失の計上などが条件として設定されています。
幅広い経費が助成対象で、システム構築費やクラウド利用料、販売促進費なども含まれるため、アプリ開発に活用しやすいのが特徴です。採択率も高く、申請から交付までの期間も比較的明確に設定されているため、積極的に検討したい制度のひとつといえるでしょう。
中小企業省力化投資補助金
「中小企業省力化投資補助金」は、業務効率の向上や人手不足対策を目的とした投資に対して支給される制度です。近年深刻化する人材不足に対応するため、中小企業が省力化や自動化のためにアプリやシステムを導入する取り組みが対象となっています。
たとえば、業務管理アプリの開発や、店舗向けの予約管理システムの構築などが申請対象となり得ます。
申請には、具体的にどのように省力化が実現されるのか、その結果どの程度の業務効率が見込まれるのかを示す資料が求められます。人材不足の影響を軽減し、持続可能な経営基盤を構築するための有効な手段として、アプリ開発にも活用しやすい制度といえるでしょう。
ものづくり補助金
「ものづくり補助金」は、中小企業の革新的なサービス開発や生産性向上を支援するために設けられた全国規模の制度です。これまで製造業のイメージが強い補助金でしたが、近年ではIT分野の革新にも対応しており、アプリやシステムの開発にも利用可能です。
とくに、既存業務の効率化や顧客サービスの向上につながるアプリ開発、DX化を目指す取り組みなどが申請の対象となります。補助率は中小企業で1/2から2/3、小規模事業者であればさらに高い割合が適用される場合があります。補助額の上限は2,000万円を超えるケースもあり、比較的大規模な開発にも対応できるのが強みです。
申請の際は、独自性や革新性、事業計画の実現可能性が重視されるため、事前にしっかりと準備することが重要です。アプリ開発を通じて事業全体の競争力を高めたい企業に適した制度といえるでしょう。
新事業進出補助金
「新事業進出補助金」は、新しい市場への進出や新規事業の立ち上げを支援するために設けられた制度です。既存の事業に依存せず、新たな収益の柱を築く取り組みが対象となるため、これから新規顧客向けのアプリを開発したい場合などに活用が期待できます。
たとえば、既存サービスを基にした異業種向けアプリの構築や、地域課題の解決を目指す新しいサービスアプリの開発などが具体的な事例として挙げられます。補助額や助成率は事業規模や内容によって異なりますが、成長分野に挑戦する事業者が対象となるため、申請書には明確なビジョンと収益見込みが求められます。
市場の変化に対応し、長期的な成長戦略を描くための第一歩として活用できる点が強みです。新しい顧客層やマーケットを狙う企業には、ぜひ検討してほしい制度です。
アプリ開発で補助金を利用するメリット

アプリ開発において補助金を活用することは、単なる費用削減以上の効果が期待できます。資金面での負担軽減に加え、経営基盤の安定や新たな事業展開のきっかけにもなるでしょう。ここでは具体的なメリットについて順に確認していきます。
開発コストを抑えられる
補助金活用の最大の魅力は、開発コストを大幅に圧縮できる点です。オリジナルアプリの開発は企画から設計、実装までに膨大な作業が発生し、外注した場合はさらに高額な費用が必要となります。結果、予算に限りがある中小企業や個人事業者は必要な機能を削るなどして開発するケースが少なくありません。
補助金を申請し、採択されれば、自己資金の割合を減らしつつ本来必要な機能や品質を維持して開発できる可能性が高まります。加えて、開発予算に余裕が生まれることで、ユーザー体験を高めるデザインや追加機能の検討がしやすくなるでしょう。コスト面の課題を解消し、理想の仕様を実現する有効な手段として積極的に検討すべきです。
資金繰りが安定しやすい
補助金を取り入れることで、企業の資金繰りに余裕が生まれやすくなるのも大きな利点です。一般的に、開発費用は全額自己資金もしくは金融機関からの融資で賄われることが多く、その場合は返済の負担や金利コストが経営の足かせになる恐れがあります。補助金は原則として返済義務がないため、融資に頼る割合を減らし、手元資金を確保しやすくなるでしょう。
運転資金を残しながら開発に着手できるので、急な支出にも対応しやすくなり、経営全体の安定につながります。さらに、資金面でのプレッシャーが軽くなることで、新規事業やマーケティング活動への投資も計画しやすくなり、中長期的な成長戦略を描く際の重要な土台となるはずです。
事業拡大のチャンスにつながる
補助金を活用して開発したアプリが、新たな収益源や販路拡大のきっかけになるケースも多いでしょう。業務の効率化や顧客体験の向上が実現すれば、社内のリソースに余裕が生まれ、他の事業に投資する余力が生まれます。たとえば、DXを推進するアプリを開発して業務負担を減らし、空いた時間を新規顧客獲得に充てる、といった展開も可能です。
また、スマートフォンユーザー向けのサービスを強化することで、既存顧客の満足度を向上させるだけでなく、新しい市場やターゲット層にアプローチする手段としても有効です。事業規模の拡大やブランド価値の向上にも寄与しやすい補助金は、積極的に検討したい施策のひとつといえます。
採択されれば返済不要でリスクが低い
補助金が他の資金調達方法と大きく異なるのは、採択後に返済義務が発生しない点です。銀行融資やリースなどの手段を利用した場合、毎月の返済が経営に影響を及ぼすリスクは避けられませんが、補助金は採択されれば返済の心配がなく、資金計画に柔軟性を持たせることが可能です。
ただし、採択を勝ち取るためには、しっかりとした事業計画と申請書類の準備が不可欠です。また、交付後には報告義務が発生する場合もあるため、その点も見越してスケジュールを立てると良いでしょう。
失敗した場合のリスクを低く抑えながら、成長に挑戦できる点が補助金の大きな魅力です。適切に制度を理解し、十分に準備したうえでの申請を心がけましょう。また、条件不履行で返還命令の可能性もあるので注意が必要です。
アプリ開発で補助金を利用する際の注意点

補助金は魅力的な制度ですが、採択されるためには周到な準備と制度の理解が必要です。無計画に進めると失敗やトラブルにつながる恐れがあります。ここでは、補助金を活用するうえでとくに意識すべきポイントを具体的に解説します。
審査のハードルが高い場合がある
補助金は申請者全員が受け取れるものではなく、審査によって採択者が決定します。とくに人気の高い制度では申請が殺到し、わずかなミスや計画の甘さが命取りになる場合も珍しくありません。審査基準では、事業の独自性や社会貢献度、実現可能性が重視され、安易な申請では選ばれにくいといえます。
ただ「開発資金が必要」という理由だけで申請しても、政策的な目標との整合性がなければ不採択となる可能性が高いでしょう。採択を勝ち取るためには、事業の目的や成果を明確に示し、数字やデータで裏付けられた説得力のある計画を作成する必要があります。準備不足が致命的な結果につながる点を理解しておくことが大切です。
スケジュールに余裕を持つ必要がある
補助金の申請から採択までには、数週間から数カ月の時間を要することが一般的です。さらに、交付決定が下りる前に事業に着手してしまうと、補助対象外になるリスクもあります。
慌てて準備した結果、書類不備や計画の精度不足で不採択となる事例も少なくありません。提出書類の作成には見積もりや証明書類の取得、事業計画書の整備など時間のかかる作業が含まれるため、前もって余裕を持って準備を開始する必要があります。
公募期間や申請期限は年度ごとに異なることもあるため、最新情報を確認しながら逆算してスケジュールを組むのが重要です。時間管理を徹底することで、申請書の質を高めやすくなり、採択率の向上にもつながります。
申請要件や条件を満たすか確認する
補助金には、それぞれ細かい対象要件が設定されています。業種や企業規模、資本金、従業員数、事業の内容や目的が条件を満たしていなければ、いくら計画が優れていても採択されません。制度によっては、過去に利用した実績がある場合や、他の補助金との重複申請がある場合に不利になるケースもあります。
知らずに条件を満たさず申請してしまうと、準備にかけた時間や労力が無駄になるでしょう。申請前には必ず最新の公募要領を確認し、必要であれば専門家に相談しながら進めるのが安全です。自社が条件をしっかり満たしているかを正確に判断することが、無駄なく制度を活用するうえで欠かせない姿勢となります。
採択後の報告義務やペナルティに備える
補助金は採択されたあとも、進捗管理や報告義務が課せられるのが一般的です。事業終了後には、計画通りの成果を挙げられたか、経費を適切に使ったかなど詳細な報告が求められます。内容が不十分だったり不適切であれば、補助金の減額や返還を求められる可能性があります。
とくに高額な補助金では、売上や雇用の目標を達成することが条件になる場合があり、結果が伴わなければペナルティの対象になるケースも見受けられます。申請時点でこうした義務やリスクを理解し、スケジュール管理や記録の保存を徹底することが重要です。採択後も気を抜かずに、最後まで責任を持って取り組む覚悟が必要となるでしょう。
アプリ開発における補助金活用の流れ

補助金を活用してアプリ開発を進めるには、計画的に段階を踏んで準備することが大切です。全体の流れをあらかじめ理解しておくことで、申請や報告の不備を防ぎ、スムーズな採択につなげやすくなります。ここでは補助金活用の一連の手順を順番に解説します。
補助金制度を選定するための事前調査を行う
まず最初に必要なのは、自社の状況に適した補助金制度を見極めることです。補助金ごとに、対象となる業種や従業員規模、申請可能な事業内容が異なるため、十分な情報収集が欠かせません。制度によっては、特定の分野を優遇する一方で一部業種が対象外となる場合があるため、公募要領や募集案内を読み込み、自社の条件に合致するか確認しましょう。
近年では複数の制度が同時期に募集されることも多いため、内容や補助率、支給上限を比較検討し、目的に最も適したものを選ぶ必要があります。選定の段階で迷う場合は、専門家に相談しアドバイスを受けながら進めることも有効でしょう。ここでの選び方が採択の可能性を左右するため、焦らず丁寧に検討しましょう。
採択を意識した具体的な事業計画書を作成する
制度が決まったら、次に取り組むべきは審査を意識した事業計画書の作成です。補助金の審査では、事業が政策目的に合致しているか、計画が実現可能で収益性が高いかが重視されます。したがって、アプリ開発の目的やターゲット層、提供する価値、開発スケジュール、期待される成果や経済効果を具体的に記載することが求められます。
単に見積もりを添付するだけでは説得力に欠けるため、課題解決に向けた戦略や市場調査結果も盛り込み、計画に厚みを持たせると良いでしょう。実績のある事業者や第三者の意見を取り入れ、客観的な視点で仕上げることも大切です。時間がかかる作業なので、余裕を持って準備に着手するよう心がけましょう。
必要な申請書類を揃えて期限内に提出する
計画書が完成したら、申請に必要な各種書類を用意して提出します。提出する書類には申請書本体のほか、法人登記簿謄本や直近の決算書、見積書や発注書など、多くの添付資料が求められます。どの書類が必須かは制度ごとに異なるため、最新の公募要領を確認し、チェックリストを活用して準備すると良いでしょう。
提出方法もオンライン申請が主流ですが、場合によっては郵送や持参が指定されることもあるため、事前に確認しておく必要があります。期限を過ぎてしまうと受理されないため、余裕を持ったスケジュールで手続きを進める姿勢が大切です。万が一の不備がないよう、複数人で最終確認を行うのも効果的でしょう。
採択通知を受け取った後に交付手続きを進める
申請が受理され、審査を経て採択されると、その旨が通知されます。通知が届いたら次に進むのが交付決定の手続きです。交付手続きの段階を経て初めて正式に補助対象事業として認められるため、それ以前に開発に着手するのは避ける必要があります。
交付決定後も、証拠となる書類を必ず残しておく、定期的な進捗報告を怠らないなど、求められるルールに従って進める意識が重要です。ルールに沿って適切に運用すれば、最終的な補助金支給も問題なく進むでしょう。採択後も緊張感を持って、決められた手順を守りながら開発を進める姿勢が求められます。
開発完了後に詳細な成果報告を行い精算する
アプリの開発が完了したら、事業の終了報告を行う段階に入ります。終了報告では、当初の計画で掲げた目標が達成されたか、経費が適切に使用されたかを詳細に記載する必要があります。報告内容が不十分だと支給額の減額や返還要求につながる恐れもあるため、経過を日々記録しておくと安心です。
経費の領収書や契約書なども整理し、整合性の取れた形で提出するよう心がけましょう。最後まで計画に沿って確実に手続きを完了させることで、安心して補助金を受け取れる環境が整います。手続き完了まで気を抜かず、責任を持って対応することが大切です。
まとめ
アプリ開発において補助金や助成金を活用することで、資金負担を軽減しつつ高品質なサービスを実現できます。各制度の特徴や申請時の注意点、必要な流れを把握し、余裕をもって準備することが採択率向上につながるでしょう。
適切な制度選びや報告までの対応を徹底する姿勢が成功への近道です。申請書類の作成や計画の立て方に不安が残る場合は、早めに専門家の力を借りる選択も重要です。
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記事の執筆者
株式会社イチドキリ 代表取締役
徳永 崇志
兵庫県の実家で、競走馬関連事業を展開する中小企業を営む家庭環境で育つ。
岡山大学を卒業後、大手SIerでエンジニアを経験し、その後株式会社リクルート法人営業に携わる。株式会社レアジョブではAIを用いた新規事業の立ち上げに従事し、リリース1年で国内受験者数No.1のテストに導く。株式会社素材図書で役員を務めた後、株式会社イチドキリを設立。中小企業向けに、補助金獲得サポートや新規事業開発や経営企画のサポートをしている。Google認定資格「Google AI Essentials」を2024年に取得済。